ちっぽけなプライド

正解はなんだったんですか? ってことよくあります。


先日、以前研修会でご一緒した同業の方々との飲み会がありました。
面子は私を含め5人いたんですが、私ともう1名(マツイさん)は他のみなさんより少しだけ先輩でした。

ひとしきり呑んで食べてで、いつのまにかお会計です。
お会計が35462円と。ここまできてお読み頂いている方は察したと思います。そうお会計トラブルです。ただ、単なるお会計トラブルではないんです。


店員さんが伝票を持ってくると同時に「じゃあ皆さん6000円でいいよ」と、仕切り上手のマツイさんは言うんです。
えっ? 6000円ってことは
35462円ー(6000円×4人)=11462円
で、マツイさん11462円も支払うの? と思いつつ、私は6000円を提出すると、「あん? Youは8500円だよ」とマツイさん。

う、うん。知ってた。なぜなら今回の面子の中で最年長は私だからです(マツイさんよりも少し職歴が長い)。
私は「むしろ7500円でいいの?」と言いながら千円札を追加で2枚と500円玉を提出しました。


ここまでは良いんです。フェアだと思います。You呼ばわりされたこと以外は。ただ、ここからややこしいくなってきます。


皆さんから集金を終えたマツイさんは、「あっ 1000円余った! この千円札はがんばって一人暮らししてる君にキャッシュバックだ☆ 」と、チーム6000円のひとりに1000円渡しました。
私は「じゃあ私とマツイさんを7000円にすれば済む話じゃ...」と言いかけながらもよく分からないまま1000円が消え去りました。
マツイさんは余った1000円の片がつくとふらふらっとお手洗いに席を立ちました。

と、ここで店員さんが登場し、お会計をそろそろ...と言うので、私は伝票にお金を挟み手渡しました。すると、店員さんがお札を何度も繰り返しカウントし、カウントする度に顔をしわくちゃっとするではないですか。そして、申し訳なさそうに「あのぅ3462円足りないんですが...」と。

えっ? ちょっとまってよキャッシュバック☆とかしてる場合じゃないよ。足りないよ! 計算間違えてたよ! と、マツイさんに訴えかけようとも、彼はトイレ。
私は仕方なく追加で千円札を4枚提出しました(チーム6000円も仲良くお話していてこの経緯は知りません)。ただ、まあ私はいいかなー...と。いちおう最年長だし、人しれず皆さんより少し多めに支払うのに異存はありませんでした。店員さんもニコッとしてお釣りを取りに行きましたし。

と、そこにマツイさんが颯爽と現れ「お会計済んだ? お釣りもがんばって一人暮らししてる君にキャッシュバックだ☆」と言うではないですか。


「えっ?」


ちょっと待って。それって、ただ貢いでるだけじゃん。さっきの1000円は良い。一度手に渡ったものを返してなんて言いません。しかも、いちおう余っているって認識だったしぎりぎり納得できます。ただ、全てが明らかになった今、これでお釣りまで渡したら、単なるお金あげる人じゃん。相手は一人暮らしがんばってるかもしれませんが、こっちもがんばって生きてるし! むしろ一人暮らしだし!とかなんとかかんがえているうちに、店員さんがお釣りの538円を握りしめ、私に手渡しました。

私は迷わずお釣りの所有権を主張しようとしました。ただ、はっと気付いたんです。ここで、お釣りの所有権を主張したら私だけ多めに支払ったことが明らかになります。でも、それは本意ではないんですよ。いちおう最年長だし、まあそれくらいは人しれず対応するくらいの度量の広さ(?)とこんな内容をここに書いてる時点で十分度量狭いっていう自覚も持ち合わせています。


平穏をとるかプライドをとるか。


マツイさん「さあさあ! お釣りもあげろYO☆」

私「あのぅ...実はさっき足りなかったみたいで。せめて、お釣りは...ねっ☆」

マツイさん「...... ?」

私「ねっ☆」

マツイさん「あー! そうだったんですか? すみません。計算間違えてました? 本当に申し訳ないです。差額払います!」

マツイさんは本当に申し訳なさそうに平身低頭でした。なぜか急に敬語だし。
あっ、選択ミスだっ! と思ったときにはすでに遅く。もうマツイさんから1000円受け取っていました。


538円のプライド。いや違います。これは金額じゃないんだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。
そうだ。この538円はこの先ずっと財布にいれておいて、時折り差しかかる人生の分岐点で自分を戒めるときに取り出そう。自分はプライドだけは捨ててないんだ...って。

と、思いながらも、帰りに本屋でHUNTER×HUNTERの最新巻を購入して、私のプライドは118円になりましたとさ。