メイド イン どこ?

昨年インドを旅行したとき、デリーでインド人のタクシー運転手さんと仲良くなりました。

車中にて、運転手さんはずーっと口笛を吹きながらラジオから流れるインド音楽に身を委ねて縦揺れしてました。少し気まずい沈黙。なにか話したいけど、そもそもそういうタイプの人なのかなーとうじうじ考えながら時は流れました。すると突然口笛を止め、助手席の私の目をじっと見て「おれは唄が好きなんだ。なにか日本語の唄を歌ってくれ!」という無茶ぶりをしてきました。

えっ? 日本の歌? だんご三兄弟とか? いやなめられる! というか歌うの恥ずかしい! なんだかJ-POPとかではなくて、日本古来の唄がいいと思う! 国歌? いや国歌をアカペラで歌える自信ないし、あぁああああああああ!! っと、咄嗟に歌ったのが「さくらさくら」(直太郎のではないです)でした。なんだか義務教育の成果を感じたのを覚えています。

歌い終えた後、これは日本で有名なチェリーブロッサムの優雅さと儚さを表現した唄で上手い人が歌うといいんですよ。とかなんとか必死に弁明(?)しました。

すると運転手さんはにこりとして「よし、じゃあ俺の好きな唄も聴いてくれ」と歌い出しました。おい、自分が歌いたかっただけだろう。


原詩(ヒンドゥー語)
ほにゃららぴじゃぱん〜♫くちゃまきたるらかなだ〜♫ ぼるぼるべんこめくに〜♫ どるちぇくっすんちゃいに〜♫ もこはかつるべ〜♫

翻訳
俺の靴は日本製♫ 俺のズボンはカナダ製♫ 俺のジャケット米国製♫ 俺の帽子は中国製♫ でも! 俺の心はインド製♫


その歌声は自信に満ちていて、穏やかで、年輪を重ねた人間だけが醸し出せる豊かさを感じました。というより、ふつうに歌が上手い人でした。

歌い終えた運転手さんは、私の目をしっかりと見据え、ドヤ顔で「お前の心は何製だ? 日本人の誇りを持て!」と、言い放ち、再び口笛を吹きながらラジオから流れるインド音楽に身を委ねて縦揺れしてました。

私は身につけてるものほとんどが中国製で、しかも食べてるものはほぼ中国製だったり米国製だったりで、臓器やらなんやらも含めて日本製のところなんかあるのかなーと思いました。今さら心だけ日本製って言われてもなんだかもの悲しいなーっと。

すると、私のそんな気持ちを察してか、運転手さんは今度は進行方向を見据えたまま「日本人はすごいさ。俺たちインド人はみんな尊敬しているんだ。日本人は原爆を投下されて、焼け野原となった土地をゼロから復興し、今や高層ビルが建ち並び、政治や技術面においても世界をリードしている。それはなにより日本人が勤勉だったからだ。誠実でひたむきで一生懸命であること。それが報われたんだ。これは俺たちインド人にとって大きな励みとなった。俺はインドが大好きだし、誇りを持っているが、日本人のことは二番目に好きだぜ」と言いました。

それを聞いた私はなんだか嬉しかったんです。うん、確かにあれは誉められたという感情でした。あれ? でも、なんで日本のこと誉められてこんなに嬉しいの? すると、運転手さんは優しい笑顔を浮かべて言いました。


「You're heart is made in JAPAN!」


なんだ。しっかり日本製じゃん、自分。